20kgダイエット 第三章 <サプリは怖いが、気付いてくれる人が>

はらみかのダイエット小説

8月になり、暑さが増してきた。何よりずっとマスクをしていなければならないのが辛い。

不織布から接触冷感の洗えるマスクに変えてみたが、それでも暑い。

今年の夏は例年より過酷そうだ。

 

ダイエットの方はというと、相変わらずサプリメントはお休みしていたが、体重は徐々にしっかり落ちていた。

しかも、サプリ全部をやめてから体調がすっかり良くなった。

飲まなくても痩せるなら、もう無理しなくても良いのではないかと思えてきていた。

なにしろお金がかかるのはそれだし・・・

原因がアロエジュースなら、残りを返品したお金で先日の救急代や検査費用の足しになるんじゃないかとさえ思った。

ある日の仕事中、山下さんが「そういえば検査結果出ましたか?」と聞いてきた。

「異常なしでした。薬も出ませんでしたし。なんか、良かれと思って飲んでいたものがアレルギーだったみたいで」

「あぁ、そういうことありますよね」という短い会話で終了。

ダイエットしているなんて言いたくないのでふんわりと返しておいた。

 

その週末、整体院に貼り替えとカウンセリングに行った。

新開さんに「あれからサプリメントどうですか?」と聞かれ、実は全部飲んでいないことを告白した。

「まぁ確かに怖いですよね。でも・・・栄養を摂らないと痩せにくくなるので、1日1回でもいいし、規定量まで行かなくても飲んでもらった方が良いんですけどねぇ」と遠慮がちな返事が返ってきた。

そう言われてしまうと、お人好しの私は期待に応えなければと思ってしまう。

何より、次回のカウンセリングで聞かれた時に、飲んでいないとは言えない。

1粒ずつでも今日の夕方から再開するか、としぶしぶ思った。

返品の考えがあったことは黙っておいた。

もちろん、救急車さわぎになったことは整体院には伝えてある。

腸の方はまだ少し気持ち悪かったが、最近は良くなってきたし、下痢も止まっていた。

恐る恐るこの日から、少しずつサプリメントを飲み始めた。

やはりこわいので、1日1回にした。調子が良さそうな日だけ2回。翌日は量を減らす。

だましだましやっていると、体も慣れてきたらしい。特に心配したような不調もなく順調だった。

8月が終わる頃にはマイナス9㎏になった。

だいぶお腹周りがスッキリしてきた気がする。

そろそろ周りの人も気づいていいんじゃない?と思ったが、案外何も言われなかった。

 

私は耳ツボダイエットを始める少し前から、実家近くの公民館で開かれるエアロビサークルに加入していた。

参加者も先生もお姉さまばかりで少し浮いていたが、1人若いので可愛がってもらっていた。

ある日先生が「実花ちゃん痩せた?」と唐突に言った。

さすがプロ!やっと気づいてくれる人が現れた!嬉しい!

「はい!9キロ痩せました」という会話をしているとみんなが寄ってきた。

「えーすごーい!」「どうやって?」と口々に言われるが、なんだか恥ずかしいので耳ツボのことは黙っておいた。

「食事の量を減らして、おやつは15時までにしてます」と濁した。

9月に入ったが、まだまだ夏だ。

2ヶ月ほど前にできた左腕のアザがやっと治った。えらく長引いた。これで半袖でも安心だ。

目標まではまだ全然達していないが、前に比べるとだいぶ痩せたので、昔の服が入るようになってきた。

ダボッとしたガウチョパンツばかりはいていたが、スカートを穿いてみたくなった。

 

この日はまたカウンセリングだった。

昔着ていたちょっと洒落た黒いトップスとカーキのロングスカートというコーディネートで向かった。

整体院の入口に立つなり、新開さんが「うわ~可愛い!」と言ってくれて、お世辞でも嬉しくなる。

院長も「原さんは自分が似合う服をよく分かってみえますね。可愛い系がよく似合うわ」と褒めてくれた。

「毎回どんな服着て来てくれるか楽しみだわ」と見送られ、ちょっとプレッシャーを感じながら帰った。

そもそもオシャレをしたくて痩せようと思ったし、娘が大きくなったら親子で双子コーデなんかしたいな、とも思っていた。

私の職場は男性陣は基本スーツだが、女性陣は私服だ。

まぁよくあるオフィスといったところ。

職場にもスカートで出勤するようになった。

仕事でオシャレしなくても・・・と思っていたが、なんだかんだ仕事している時間が一番長い。

せっかくだから楽しもうと思い始めた。

ある日、同じフロアの理子ちゃんが「ねぇ、痩せた?」と聞いてきた。

この時ちょうどマイナス10㎏を達成していた。

「うん、そう!気付いてくれた?」と嬉しくなった。

理子ちゃんは私より少し年上で、奇遇にも前の職場で一緒だった。

結婚前の私のことも、例の耳ツボ女性のことも知っている。

「実は私も耳ツボやってるの。でもあと10㎏痩せたいのよねー」

「そっかぁ。頑張ってねー」という会話をし、仕事に戻った。

 

やっと職場で気付いてくれる人が現れた。

いや、もしかしたらみんな気付いていても言いづらいのかもしれない。

なにせ私はまだ入社2年目・・・というのは言い訳だ。

私がもし、人懐っこくて話しかけやすい人なら、こんな状況にはならないはず。

きっと人見知りがたたって、そこまで周りと打ち解けられていないせいだ。

また自分の嫌な所に目を向けてしまい、暗い気持ちになった。

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