20kgダイエット 第六章 <嬉しいニュースと新しいスタート>

はらみかのダイエット小説

暦の上では10月といえど、秋はまだ遠そうだった。

 

1つ、おめでたいことがあった。

母が再就職したのだ。

ちょうど義母の葬儀の日に採用の電話があった。

私の職場は実家から徒歩圏内のため、母が家にいるうちは実家で昼休憩を取っていた。

母が働きに出るとともに、私はお弁当生活を始めた。

整体院でもらった一食規定分量のタッパーに、バランスよく食材を詰める。




お昼はいつも最上階の展望室で食べる。社食はない。

中川さんとそのお友達、山田さんと一緒だ。

山田さんも同じフロアのパートさんで、グループが隣なだけ。

柔らかい雰囲気で話しやすい方だ。

そしてもう1人、忘れてはいけないムードメーカーがいる。

庶務課のいちかさんは、6月まで同じ部署で働いていた準社員さんで、私より2つ年下なのに2人の子持ち。

同じフロアの時からよく話をしていた。

彼女は誰とでも仲良くなれる才能を持っていて、私からすると羨ましい限りだった。

いちかさんはなかなか貫禄のある体型をしている。

まさに肝っ玉母ちゃんという感じ。

私もついこの間まで似たような大きさだったので、人のことは言えないが。




そんなある日、中川さんが「今日は知らない人来るよ」と言った。

人見知りの私は戸惑ったが、後から混ぜてもらった立場なのだから仕方ない。

受付の仕事をしている松浦さんを紹介された。

とても腰の低い人で、心配なんて全く必要なかった。

 

コロナ対策で、ある日展望室の丸机には十字型のついたてがつけられていた。

4人しか座れない。

山田さんは「メニエル持ちだから、これ見てると目が回るわ」と言い、この日以来自転車で家に帰って食べるようになってしまった。

さみしくなった。「コロナが明けたらまたご一緒してね」と、気の遠くなるような約束をした。

お弁当を食べるようになり、職場にいる時間が以前より長くなった。

中川さんとは仕事中もお昼も同じだし、だいぶ馴染んできた気がした。




もう1つ新しく始めたことがある。ブランド服のレンタルサービスだ。

私には麻央という親友がいる。

彼女とは昔職場が一緒で、もう10年来の付き合いになる。

麻央はかなりの美人で、私とは違いとてもスリムだ。

身長は私より3㎝ほど高いが、洋服も靴もSサイズというミニマムぶり。

まだ残暑が厳しい頃、麻央はハンガーに書かれたサイズを信じ、試着せずにスカートを買ったらLサイズで、私にもらってくれないかと言ってきた。

ありがたく頂戴したが、残念ながら私には小さかった。

「これLじゃなくてMなんじゃないの?」と思った。

とにかく、このスカートが入るのを当面の目標にして、達成したら今話題のレンタルサービスに申し込もうと思った。

シルバーウィーク3日目、まだお義兄さんから連絡が来る前の日のこと。

やっとこの小さな夢が叶ったので、3着だけのお試しプランを申し込んだ。

私の大好きなピンク色の箱が届き、その箱を返却するとまた新しく3着届くというシステム。

飽き性の私は、新しい服が好きだ。

仕事も私服なので助かるし、何よりクローゼットに知らない服があるというだけで楽しい。

手持ちの服とのカラーコーディネートを考えるだけでテンションが上がり、なかなか寝付けない日もあった。

まるで毎日が遠足の前日みたいだった。

ただ、時々入らない服があった。

Mサイズの中でもウエストがしぼってある、いわゆる9号サイズはまだ無理だったし、流行りの洋服は私の体型では着こなせないものもあった。

もっと痩せなさい!!と自分に喝を入れた。




キレイな洋服に合うよう、メイクも以前よりきちんとするようになった。

マスカラなんてしばらく使っていなかったが、メナード商品でお湯で落とせるものがあると知って購入した。

お風呂で落とせて楽だし、まつ毛が抜ける心配もない。

しかも嬉しいことに、まつ毛が長くなる成分まで入っているらしい。

お昼休憩でマスクを外すので、目から下もファンデーションを塗ることにした。

と言うのも以前は手抜きで、マスクで隠れる部分はメイクをしていなかったためだ。

 

お弁当効果で、月末が近づく頃にはマイナス12㎏まで来ていた。

だいぶくびれらしきものが出てきたので、トップスをスカートにインして着れるようになった。

これはずっと私の憧れの着方だった。

しかしあきくんはあまりダイエットに関心がなく、気付いていないようだった。

私が仕事で彼が休みの日があったので、七分袖の黒トップスにレンガ色のスカートをインした姿を見せて聞いてみた。

「どう?似合う?」

「うん、可愛いよ。それにしてもだいぶ痩せたね」と、やっと認めてくれた。




仲良くなったばかりの松浦さんと2人でお昼の日があった。

彼女はダイエットに興味があると初対面の時から言っていた。

「私は4ヶ月前はいちかさんくらい大きくて、今より10㎏以上太っていたんだよ」という話をしてみた。

「いくらかかるの?」と聞かれ、正直に「1ヶ月10万くらい」と答えると

「無理だわ」と当然の答えが返ってきた。

一緒に耳ツボダイエットをやってみてはどうかと思ったが、誘うのは諦めた。

 

もう1つ嬉しいニュースが飛び込んで来た。

ママ友のももちゃんから、奇遇にも隣の部署に入社することになったとLINEが来た。

「すごい!いつから?」と返すと

「産休の人の代わりだから、来月かなぁ。今月説明だけ聞きに行くよ!」とのこと。

たしかに、もうすぐ臨月を迎えそうな子がいる。なるほど。その子の代理か。

「来るんだ?その時ちょっと話したいなぁ」と返した。

中川さん達に「私の友達が来月入ってくるので、お昼ご一緒して下さい」と伝えると、みんな快くOKしてくれた。




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